鼠径ヘルニアについて｜大和高田市の総合病院

もしかしたら脱腸（鼠径ヘルニア）かも？と思ったら

鼠径ヘルニアとは？

鼠径部とは、脚の付け根付近の下腹部で、腹筋の外側の辺りを指します。鼠径部にはもともと精巣や卵巣とつながる血管や靭帯などが通るトンネルのような構造があるため、この部分はまわりの腹壁より弱くなっています。お腹の力がこの弱い部分にかかって腸（もしくは内臓脂肪）が脱出することを鼠径ヘルニアと言います。

鼠径ヘルニアの症状は？

鼠径部に膨らみを感じたら鼠径ヘルニアかもしれません。
典型的なものでは鶏の卵ほどの大きさの柔らかい膨らみで、立ち上がったりお腹に力を入れた時に出っ張り、横になったときに凹みます。男性では陰嚢が膨らむほど大型なものもあります。
しかし、時として大きさがそれほど目立たず、立った時や歩いたときに鼠径部の痛みや不快感としか感じない場合もあります。また、出っ張ったままで戻らない場合もあります。
鼠径部付近には他にも水腫やリンパ節腫大などといった、鼠径ヘルニアと異なる疾患もありますので、鼠径部に違和感を感じた場合、ぜひ一度診察にお越しください。

鼠径ヘルニアになりやすい人は？

高齢で腹壁が脆弱な方、力仕事や立ち仕事されている方、日頃よりお腹に力がかかっている方（慢性的な咳、トイレ時にいきむ、激しい運動など）、出産後の方、などなりやすいと言われています。

鼠径ヘルニアは様子を見ていてもいいですか？

鼠径ヘルニアは腹壁の脆弱な部位でおこるので、筋肉を鍛えたり、薬で治すことはできません。痛みや不快感の原因となっているなら、手術の適応となります。
痛みがない場合は様子を見ることもありますが、鼠径ヘルニアがある場合は早かれ遅かれ痛みが出てくると言われているので、よく相談のうえで手術の方針となることもあります。
また、鼠径ヘルニアが大きく脱出してお腹に戻らなくなり、強く腫れて痛みを伴う状態（嵌頓）では最悪、腸の壊死もありうるので、この場合は早急に手術することが望ましいです。

鼠径ヘルニアの手術はどのようにやりますか？

鼠径部の弱くなっている部位を含めて広く覆うようにメッシュを留置して腹壁を補強します。
手術には大きく分けて2通りの方法があります。筋膜を腹部表面から順に切開して腹壁の前から手術する鼠径部切開法と、一旦腹腔内に入って腹壁の後ろから手術する腹腔鏡下手術です。腹腔鏡下手術は術後の痛みが少なく、社会復帰が早いなどの長所がありますが、ヘルニアの状況や、過去に腹部手術をされているかなど体の状態に応じて最適な術式を検討します。

鼠径部切開法

手術時間	1時間程度
入院期間	4日程度

腹腔鏡下手術

手術時間	1時間程度
入院期間	4日程度

鼠径ヘルニア手術は全国的に年間約15万件行われており、最も多く行われている手術の一つです。当科においても多く行なっている手術です。

直近5年間の手術件数［内訳：鼠径ヘルニア・大腿ヘルニア・閉鎖孔ヘルニア］

	2019年	2020年	2021年	2022年	2023年
腹腔鏡下	89	67	66	95	94
鼠径部切開	29	35	22	18	25

手術のあとはどれぐらいで仕事や運動できるようになりますか？

術後早くより無理をすると痛みが出たり、ヘルニアの再発につながってしまいます。日常生活（公共交通機関での外出、買い物の荷物を運ぶ、車の運転など）やウォーキングなど軽度の運動は退院直後より再開しても問題ありません。ゴルフやスイミングなどの中等度の運動は術後二週間ほどたってからの再開になります。力仕事、体幹の筋トレや激しい運動は術後約1ヶ月経ってからの再開が望ましいでしょう。
手術の回復を十分に考慮して、生活や仕事の適切なタイミングで手術実施を検討することをお勧めします。
他に不明な点がありましたら、何でも気軽に相談してください。

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